2018-06-13

    第95話 初めてのオートバイのこと(1) (初掲載 2017年6月21(水))

    ◆前回、最初に僕が憧れたオートバイのことを書いた。今回は僕が初めて自分の乗用として所有したオートバイのことを書こう。

     それは大学に入って2年目のことだった。僕はそれまでほとんど毎日、自宅近所にあったコンビニエンスストアで夕方から夜の11時過ぎまでアルバイトをしていた。別にコンビニエンスストアでアルバイトをしたかったわけではなかったのだけれど、このアルバイトを見つける直前に、近所に住んでいた高校時代のクラスメートの女の子に電車の中で偶々出くわし、その子と話をしている中でアルバイトを探しているという話をしたところ、「私がバイトしているところで募集しているよ」と言われ、「じゃあ話を聞いてみよう」ということになり、後日そこに訪れたところ、とんとん拍子に話が進み、僕は雇われることになったのだけれど、それがそのコンビニエンスストアだった。

     数日後、僕は早速その店でアルバイトを始めたのだけれど、行ってみると僕を紹介したあの元クラスメートの女の子はいなかった。店長に訊いてみると、つい先日辞めたと言う。
     どうやら自分が辞めたいがために僕をその店に引き込んだらしい。この時、これは少々いわくつきの店なのかと思ったのだけれど、実際にアルバイトを始めてみると、そんなことは全然なかった。店長もパートのおばさんたちもアルバイト仲間も、皆普通の人で、それにとても親切だった。
     僕はその店で約10カ月ほどアルバイトを続けたのだけれど、2回生になる直前に辞めた。その理由は二つある。

     一つ目の理由は、やはり時給の問題だ。これが安過ぎた。友人たちのアルバイトの時給を聞くと僕よりも平均で100円は高かった。田舎町のコンビニエンスストアでは今以上の時給は望めない。上級生になってサークルでの出費も増えた。このままではそれを賄うのが少々苦しい。
     そんな時にサークル仲間からアルバイトの話が来た。大阪の中心地にあるパンとケーキの店での店員のアルバイトだ。時給を聞くと今のコンビニエンスストアの時給よりも、やっぱり100円ほど高かった。
     僕はその話に乗り気だった。しかし時間が合わない。その店の仕事が終わる時間だと最終電車に間に合わないのだ。いくらいい時給のバイトでも家に帰れないのでは話にならない。途中の駅からタクシーで帰ったりするのでは完全なる本末転倒だ。
     僕はその話をあきらめようとした。しかし、そんな時またしてもサークル仲間から、ありがたい提案があった。

    「途中の駅までバイクで通うたらええやん」
    「俺、バイクもってへん。買う余裕もあらへん。そもそも免許持ってへんし……」
    「俺、もうすぐ新しい原チャリ買うから今の古い原チャリを廃車にするねんけど、何やったらそれに乗る? もちろんタタでええで」
    「ほんまにええの?」
    「うん」
    「ほんまにほんま?」
    「ほんまにほんまにええでぇ」
     これが二つ目の理由だ。僕は原チャリというオートバイを手に入れることができることになった。

     それから僕は本屋で原動機付自転車の免許取得に関する本を買った。中身を見て「ああこれがあの時母親が必死になってにらめっこしていたやつだったんだ」と思った。そして僕もやっぱりあの時の母親と同じように毎晩夜な夜なこの本にかじりつき、にらめっこをしながら試験問題を解き続けた。

     試験当日はけっこう緊張した。「原付免許の試験なんてメチャクチャ簡単」と言われ続け、自分でも実際に本で試してみて、言われるとおりだと思っていたが、それでも侮ったがために一回目の試験に落ち、二回目で合格したという人間も周りに若干いたからだ。この頃の試験場は僕が住む地域からかなり遠い場所にあって交通費が往復で2000円以上かかった。お金のない僕としては試験代も合わせると結構な額の出費になったから、絶対に一発で合格したかった。
     試験が終わり、それからしばらくして結果の発表があった。電光掲示板にある受験番号が合格なら光るのである。たかが原付免許の学科試験であったが本当に緊張した。それは大学入試の合格発表並みのものと言っても過言ではなかった。
     結果は……、合格だった。

     翌日だったか、僕は例のサークル仲間と役所に行った。彼がそれまで乗っていた原チャリの登録を廃止し、僕のものとして新たに登録し直すためだ。
     手続きは滞りなく終わり、僕は初めてナンバープレートというものを手にした。
     そして、(実際にどこでどんなふうにだったか、とんと記憶していないのだけれど)そのサークル仲間から彼がそれまで乗っていた原チャリを無償で譲り受けたのだった。

    (次回「第96話 初めてのオートバイのこと(2)」に続く)


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    イクタシバ イタル
    いくたしば いたる 
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