2018-10-03

    2018年10月03日(水)

    ■自分がどこにいるのか、よくわからなかった。景色に見覚えはない。いや景色なんてもんじゃない。単に四方八方がグレーで、わずかにここと外を区切る壁のような起伏があることが認識できる程度だ。思わず景色と言ってしまったのは、その様が広大だったからだ。もしせせこましい空間であれば、これを僕は景色と言わず、単なる狭い場所というようにしか認識せず、はっきり言って自分がいるこの場所のことなど、どうでもいいと思ったことだろう。でもそうではない。ここはまるで鉛の世界にいるような気分だ。
     どうしてこんな所に自分がいるのか。
     実はその時、そんなことなど一切思わなかった。今になってそう思ったから書いた。
     本当にどうしてそんなところにいたのか。
     考えてみたが、いつものとおり、理由なんて全然ない。僕の中にある精神が好き勝手にそうしているだけだ。もう何十年もこういう目に遭い続けている。はっきり言ってウンザリだ。馬鹿の一つ覚えのような見せ方に僕はいい加減腹が立ちもする。

    「おのれはアホか!」

     思わず声に出す。でもこの世界では音がしない。声という音を出しているのに音がないのだ。でもなぜ自分の耳にその声が伝わってくるのかが不思議だった。もう物理的な世界ではないんだろう。つまりは今僕がいる場所は、やっぱり精神の中ということだ。

    「やっぱり、おのれはアホじゃ!」

     やっぱり音はしない。
     でも声は今度は波状的に僕の体にぶつかってきた。おかしなもんだ。自分が放出したはずのものが、いつの間にか自分に跳ね返っているのだ。
     こんな世界にいると本当に疲れる。
     もういい加減にしてくれ。そう思った時だった。

    「やあ、ひさしぶりだな。元気にしていたか?」

     その声に聞き覚えはなかった。たぶん初めて聞いた声だ。

    「なに? あんた、いったい誰?」

     そう言って辺りを見回したが人らしき姿はどこにもない。

    「どこにいるわけよ?」

     どうでも良かったが一応愚痴るようにそう言った。

    「あれぇ、もう見えねぇか。まだ大丈夫だと思ったんだけどなあ。予想以上に進んでたかぁ」
    「何をわけのわかんねぇこと言ってんのよ」

     何だか見下されているように思えたから腹が立って、吐き捨てるように言った。もう誰から何をどう言われようと僕はどうでもよかったのだ。

    「つまらねぇ顔になったもんだなぁ。もう少しはいい顔で収まっているって思ってたんだけどよぉ」
    「好き勝手なこと言いやがって。てめぇは何様のつもりだ」

     ますます腹が立ってきた。

    「へへっ。もう忘れてやがんの」
    「なにを」
    「おめぇが俺を呼んだんじゃねぇか」

     馬鹿を言うな。僕は誰も呼んでいない。ただでさえ他人に振り回されるのが嫌だから、いやもしかしたら周りにいる人間すべてに対してそう思えたから、だからここからいなくなりたいと願ったように思える。ただそれだけだ。だから僕を馬鹿にしているようなことを言い続けているような奴を呼んだりするわけがないのだ。

    「やっぱり俺を呼んだんじゃねぇか」

     そんはずはない。僕は誰も呼んじゃあいない。ここに来てまで誰かと会いたいだなんて思うはずがない。だってそれを含めて全部のことが嫌で面倒くさくなったから、だからここに来たように思えるのだ。そしてここからまた更に別の場所に僕は行きたいと思っている。そんな僕が誰かを、ましてや得体の知れない奴を呼ぶことなどあろうか。

    「俺にどこに連れてって欲しいんだよ?」

     そう訊かれて僕はやっと気が付いた。そうか、だからあんたがやって来たのか。
     僕の目の前に薄らと影のようなものが見え始めた。それは人間のようであり人間のようでなかった。

    「もういっぺん訊くぜ。言っとくけどもう次はねぇからな」

     僕は今にも消えてなくなりそうな影のようなものに向かって素直に頷いた。

    「で、俺にどこに連れてって欲しいって?」

    「あの世」

     そう言ったか言わないかのうちに目が覚めた。時計を見ると午前3時10分だった。

     昨夜見た夢の話だ。


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