2018-04-18

    2018年4月18日(水)

    ■現在の職場(客先)の最寄り駅のすぐ近くに体育館らしき建物がある。「らしき」と書いているのは、それが本当に体育館なのかどうかわからないからだ。もしかしたら武道場なのかもしれないし単なる講堂のような施設なのかも知れないが、とにかく何かそういった建物があるのだ。
     最近は大して残業をしていないので、比較的まだ夕方と言ってもいいような時間帯にその近辺を通ることが多いのだが、ほぼ毎日と言っていいくらい、その建物の中から様々な声が聞こえてくる。

    「キェーッ!」
    「ウリャーッ!」
    「ヒャーッ!」
    「チョアーッ!」
    「アアーッ!」
    「キョエーイッ!」

     声と言うよりもかけ声だ。他にも文字に起こせないような叫び声とも言っていいような声も聞こえてくる。
     いったい何をしているのか?
     ここまでだけの記載内容であれば、おそらくその答えは出てこないだろう。しかしこう付け加えれば難なく答えは出てくる。
     
     「この叫び声のような声のほとんどは、木、もしくは竹の類が何かにぶつかるような音と共に発せられている」

     すぐにおわかりになられただろう。その建物の中では剣道の練習が行われているのだ。もちろん僕はその中を覗いたわけではない。複数の人間たちによると思われる前述のようなかけ声、そして間違いなく竹刀であろうものどうしが激しくぶつかる音。日本で生まれ育った人間であれば、これらから「あれは剣道の練習をしているのだ」という答えを、実際を見ずとも間違いなく手に入れるだろう。だからあのような数々の奇声が建物の中から何かが激しくぶつかり合う音と共に聞こえてきても、それを訝しく思ったりすることはないのだ。
     そんなふうに最近毎日のようにその奇声などを耳にしながら帰路のため駅に向かっている僕なのだが、先日ふと思った。
    「剣道」というものをまったく知らない外国の方が、もし今ここを通ったとして、何の施設なのか外からはよくわからない建物の中から、かつて聞いたことのない、訳のわからないあのような数々の激しい奇声のようなものが、これまた聞いたこともない得体の知れぬ「バシッ!、バシッ!」という音と共に聞こえてきたとしたら、彼はいったいどんなふうに思うのだろうか?
     もちろん外からは中が見えない。高い塀があるのだ。かろうじていくつかの窓があるのはわかる。そしてそのいくつかの窓はすべて開けられていて、奇声と奇妙な音はそれらすべてから外に漏れているのだ。
     
    「キェーッ!」
    「ウリャーッ!」
    「ヒャーッ!」
    「チョアーッ!」
    「アアーッ!」
    「キョエーイッ!」

     どう考えても穏やかな状況ではない。我々はもうそれが当たり前だとわかっているが、知らない人間にしてみれば、どちらかと言うと何か凄まじいことが起こっているものと言った方が適切だろう。客観的に考えてみればそうだ。もし「実はあれは剣道をしているのではないのです。それはもう恐ろしい……」などと、そこの関係者に深刻な表情でこっそり打ち明けられたりしたら、きっと前述した外国の方と似たような感覚を僕らは覚えるに違いない。まあこの場合、ほぼ100%の確率で剣道であることに間違いはないのだけれど、「もし」を考えると意外と怖かったりするから既存概念として刷り込まれているというのは、ある意味危険なことなのかも知れない。
     さてさて、前述のような外国の方が本当にいるかどうかは僕にはわからないが、少なくともゼロではないであろう。そういった方が好奇心のあまり実際にその様、つまり剣道をしている様を見たとしたら、その時どう思うのだろう?
     そんなことを考えると僕の頭の中で果てしない妄想話の暴走が始まるのだ。

    「ワアオゥ! カレラハア、イッタイナニヲシテイルデスカア?」
    「ドウシテ、アンナマスクヲカブッテ、ボウデタタキアッテルノデスカア?」

     きっと彼は辺りにいた誰かから、あれが日本の剣道というものであると知らされるだろう。
    「オウ! アレガ、ケンドーデスカア! グレイト! アンド ビューテホー! アンド ミステリアス!」
    「バット、ドーシテェアンナァヘンナコエヲダスデスカア?」
     その問いにまたもや辺りにいた誰かからこう聞かされるだろう。

    「気合いだあッ!」

    「オウ、キアイ! ミーモナントナクワカルデェス!」
    「ワオッ! ガールモヤルノデスカァ? カノジョハァ、クノイィチデスカァ? シュリケン、ナゲルデスカァ?」

     いかんいかん、低俗な妄想話に陥ってしまった。確かにこういう外国の方がいないとも限らないのだが少々茶化し過ぎた。悪意はないことを明記してこの妄想話はここまでにしよう。
     ちなみに本当に今日わかったのだけれど、その建物は高校の体育館で、ちょっと角度を変えてその方面に目を凝らしてみると、高校生らしき若い男女があちらこちらでおのおのの部活に勤しんでいた。そう言えば以前からよく「パパパー」だの「ボーボーボー」だのと言った何やら管楽器っぽい音もよく耳にしていたのだけれど、今頃になって「ああ、あれは吹奏楽部の練習だったんだ」と認識したのだけれど、とどのつまりは「なーんだ、ここら一帯って高校なんや」と今更ながらに気がついた僕だったわけである。いやはやこれはもう前述した暴走妄想の中の彼と同等レベルだ。
    「ワァオゥ! ココハ、ハイスクールダッタンデスネィ!」

     もとい。

    「なんや、ここは高校やったんかい!」

     以上、結局はどうでもいい雑談話でした。

    ■先週、とうとう「前略おふくろ様」(正確には「前略おふくろ様Ⅱ」)終わってしまった。昨年の今頃だったか、ⅠとⅡとで全50話あるので、これから少なくとも1年間は毎週の楽しみができたと喜んだのだけれど、1年なんてあっという間に経ってしまうのだ。Ⅱの20話を観終えた辺りから段々物寂しくなってきた。いつか終わりが来ることは、それが今年の4月の中旬だということは重々承知していたのだけれど、いざ本当にその時期が近づきだすと、真剣に悲しくなってしまい、実際に最終回を観終えたら完璧な「前略おふくろ様『ロス』」の状態になってしまった。

     (若き日の萩原健一演ずる)さぶちゃんは料亭「川波」を辞めて向板として仙台の店へと旅立った。
     あれからサブちゃんは花板さんにまで登りつめたのだろうか?
     同じ時期にサブちゃんの代わりに川波にやってきた(若き日の岩城滉一演ずる)大山夕介は川波で料理人として成長していったのだろうか?
     かすみちゃんは?
     秀さんは?
     さぶちゃんは(若き日の風吹ジュン演ずる)春子と結婚したのだろうか?

     今から四十数年前に製作されたドラマだけれど、観ている時間、僕の意識はいつもその中にあった。ショーケンはあの時のショーケンがショーケンだし、坂口良子もあの時の坂口良子が坂口良子だった。もちろん梅宮辰夫もあの時の梅宮辰夫が梅宮辰夫だった。何より画面に映る風景は、あの時の風景がその風景だった。どれにも四十数年前のものという感覚はなかった。その時目にする画面の中のものが現在のそれだった。僕の中において、それらは何の違和感もないものだった。
     だが物語が終わってしまった途端、それはまるで色を失ったかのようなものに見えた。それが「ロス」だと気づくのにさほど時間はかからなかった。

    「前略おふくろ様Ⅲ」
     やってくんないかなあ、当時の俳優さんで……。

     さて、次の楽しみを見つけねばならん。このままロス状態が続いたら本当にウツになりそうだ。

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